・はじめに
血液透析では除水により循環血液量が減少し、血圧低下を引き起こすことがあります。透析中の循環血液量の変化を経時的にモニタリングすることで血圧低下を予防し、安全に透析治療を行うことが可能となります。
・クリットサインモニターの原理
JMS社製 透析用コンソールGC-X01にはクリットサインモニターが搭載されており、経時的・非侵襲的に透析中の循環血液量変化率(%BV⊿)をモニタリングすることが可能です。クリットサインモニターは血液中のHt値を近赤外光が赤血球に吸収、散乱される性質を利用して測定しており、透析開始時のHtと最新のHtから%BVを算出しています。
クリットサインセンサー 近赤外光照射モデル %BV⊿計算式
・透析中の%BV⊿の推移
除水により循環血液量が低下することで%BV⊿は変化します。%BV⊿が大きく低下することで血圧低下のリスクが増大します。また、除水速度が早い場合や基礎体重が不適切な場合は%BV⊿が低下しやすくなります。%BV⊿の低下が緩やかである場合や上昇してくる場合は基礎体重の下方修正が必要な可能性があります。心臓や血管の状態により%BV⊿の変化は個人差があるため状態に合った評価が必要です。
透析中のBV波形推移 BV波形が低下しない緩徐なグラフ
・支援システムとの連携
GC-X01で測定したBVデータはCSVファイルで出力され、透析支援システムを用いてPCへ取り込みます。取り込まれたデータはサーバーに蓄積され、他のPCから閲覧が可能となります。共有された情報から医師、看護師などへ測定結果を報告し、カンファレンスにより治療方針を検討します。
支援システムによる連携
・クリットサインモニターを用いた基礎体重変更の一例
血圧や体組成分析装置の結果からドライウェイトが不適切と判断された場合、クリットサインモニターを用いて基礎体重を変更します。%BV⊿だけでなく血圧等の様々なデータを用いて基礎体重を決定します。
基礎体重変更に伴うBV波形の変化
・まとめ
透析患者の高齢化、重症患者が増加に伴い透析中の急変が起こりやすくなっています。クリットサインモニターは非侵襲的に透析中の状況をリアルタイムに確認することが可能であり、血圧低下やショック状態を防ぐだけでなく基礎体重の評価にも使用できるモニタリング機器です。これからも安心、安全な医療を提供するために重要なモニターであると考えます。
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