1.個室隔離透析の実際
通常の透析室業務とは異なるリスクが存在❕❕
1)病態的なリスク
COVID-19という経験の無い病状と不安定な患者バイタル、治療中の病態の急変や体動による抜針・腫脹の発生など、患者側で発生しうるリスクに対して透析治療全体を慎重に観察する事が必要不可欠となります。
2)環境的なリスク
防護服(PPE、N95マスク、フェイスシールド等)の着用や複数の部屋を跨いだ同時 隔離透析など、感染隔離エリア業務スタッフ2~3名では個室隔離透析の性格上、人の目が届かない部分が発生、別室の装置アラームや異常の発見が遅れる事を危惧されました。
⇒ このような状況から安全対策の整備が急務となりました。
2.主な取組内容
1) 個室隔離透析に対する環境整備
病棟内に感染隔離エリアを設け、個人用透析装置、個人用RO装置、体重測定用のベットスケールの設置、個室隔離に必要な電源元の確保や給排水管の整備、装置情報取得用の通信環境の確保など個室隔離透析に必要な環境整備を行いました。
2)透析装置遠隔モニタリングシステムの概要
日本透析医学会より策定されている血液透析装置に関する通信共通プロトコルVer.4.0を使用し、稼働している透析装置のデータ、血圧データ、警報内容をリアルタイムで閲覧可能とした遠隔モニタリングシステムを独自開発しました。(図2)。
図2.透析装置遠隔モニタリングの概要
3) 血液浄化記録のペーパーレス化
感染隔離エリアへの書類等の紙媒体に対象に持込や持出による接触感染防止対策と作業の効率化を目的とした血液浄化記録のペーパーレス化(図3)を実現しました(現在、当院の透析室では、血液浄化記録は紙運用しています)。
図3. 血液浄化記録のペーパーレス化
4)情報共有ツールの導入
感染エリア外にいるスタッフが感染隔離エリア内部の状況を速やかに把握、円滑な情報共有を行うことを目的にWebカメラ(図4)とコミュニケーションツールの導入を行いました。(図5)
5)switchBotを用いた画面切替とアラーム対応.
複数の個室隔離透析中、別室の対応時ベッドサイドにスタッフがいない状況が発生する。エリア外からの血圧の確認やアラーム停止操作を目的にSwitchBotを導入しました。遠隔操作の対象は、除水完了アラームのブザー停止、血圧計画面への移行などの一部のスイッチ操作に限定しました。
図6.SwitchBotを用いた遠隔操作
3.まとめ
限られた人員の中で個室隔離透析を安全に実施するために透析装置遠隔モニタリングシステムの導入が急務となりましたが通信共通プロトコルを用いてシステムの独自開発を行なったことで、刻々と変化する状況に対して柔軟な対応が可能でありました。感染隔離エリア外から遠隔モニタリングをすることでトラブルの早期発見、コミュニケーションツールを用いた円滑な状況報告が容易など安全面の向上に繋がる環境体制を確立、その結果、COVID-19陽性患者の受け入れが始まり現在までに大きなトラブルが発生することなく血液透析治療の提供ができました。今後も臨床工学技士の立場から様々な提案/提供に尽力することが患者および臨床現場の寄与に繋がると考ます。
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