透析業務説明|Explanation of dialysis work

バスキュラーアクセス再循環測定について

 はじめに (スライド 2)
血液透析において透析効率は生命予後に関係する因子の一つであり、透析効率の低い症例では死亡リスクが高いことが報告されています。この透析効率を低下させる因子の一つとして再循環が挙げられます。

 バスキュラーアクセス再循環とは (スライド 3)
通常の透析では動脈回路側から脱血された血液は、ダイアライザで浄化され、浄化された血液は静脈回路より血管内へ返血されます。再循環は何らかの原因で静脈側から返血した血液が再び動脈側へ流入し、再度脱血され再びダイアライザにて浄化されるという流れを繰り返す現象のことです。

 再循環の発生原因 (スライド 4)
再循環の発生原因として、シャント狭窄などによるバスキュラーアクセス機能不全によるものと、穿刺間の距離が近い場合や動静脈回路の逆接続などの穿刺時の手技によるものが存在します。

 再循環率モニタリング (スライド 5)
再循環率の発生は透析効率を低下させる恐れがあります。このためモニタリングを行うことが重要であると考えられます。「 2011年度版慢性透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」では、再循環率のモニタリングに対して再循環率は参考として可能であれば測定するとされています。再循環率の測定は尿素法によらない希釈法または,尿素希釈法により測定する (3点法の尿素希釈法は使用してはならない )とされおり、
2回以上の再循環率の測定で,尿素希釈法を用いた場合は 15%以上,尿素法以外の希釈法を用いた場合は 5%以上であればその原因を検索する必要があるとされています

 当院で使用しているバスキュラーアクセスモニタリング機器 (スライド 6)
当院では DCS-100NXと HD02を用いた再循環率測定を定期的に行っています。
各装置の詳細はこのようになります。

 ①    HD02を用いた再循環率測定 (スライド 7)
HD02を用いた再循環率の測定方法です。
まず、静脈チャンバに生理食塩水を充填させたシリンジを静脈チャンバに設置します。
次に透析回路にプローブを設置します。
最後に、専用のデバイスを起動させることで測定を開始することが可能です。


play00:00/00:50mutefull screen①    HD02を用いた再循環率測定 (スライド 8)
HD02を用いた再循環率測定の原理ですが、静脈チャンバより生理食塩水を 10mL急入し、血液を希釈します。希釈された血液を静脈側に設置したプローブを用いて静脈側血液マーカーとして測定します。その後、動脈側に設置したプローブを用いて動脈側血液マーカーを測定します。再循環がある場合は、動脈側血液マーカーは山を描くような波形で示されます。

 ②    DCS-100NXを用いた再循環率測定 (スライド 9)
DCS-100NXを用いた再循環率の測定方法です。 DCS-100NXには、 BV計が設置されており、この BV計を用いて再循環率を測定することが可能です。測定は、モニタ内にあります再循環率測定ボタンを長押しすることで測定することが可能です。また、この再循環率測定ですが、装置内の設定で透析後から任意の時間で再循環率を自動で再循環を測定することが可能です。

play00:00/00:38mutefull screen①    DCS-100NXを用いた再循環率測定 (スライド 10)
DCS-100NXを用いた再循環率測定の原理です。まず、装置側で 10mL程度の除水を行い、血液を濃縮させます。濃縮された血液を、静脈側 BV計を用いて静脈側血液マーカーとして測定します。その後、動脈側 BV計を用いて動脈側血液マーカーを測定します。
再循環がある場合は、動脈側血液マーカーは山を描くような波形で示されます。
測定された動静脈の血液マーカー測定値の面積比より再循環率は測定されます。
以上が DCS-100NXを用いた再循環率測定の原理です。

 症例報告 (スライド 11)
それでは、これから当院で再循環を検出し対応を行った症例について報告いたします。
症例はバスキュラーアクセス機能不全により再循環が発生した症例や穿刺手技によって再循環が発生した症例、穿刺時の手技とバスキュラーアクセス機能不全が複合し再循環が発生した症例についてです。

 症例 1(スライド 12)
バスキュラーアクセス機能不全により再循環が検出された症例
患者背景は記載された内容になります。透析開始 30分目の再循環率測定で 100NXでは 57%、 HD02では 70%の再循環が検出されました。バスキュラーアクセスの種類は自己血管であり、スライドのような血管をしております。



 症例 1(スライド 13)
バスキュラーアクセス機能不全により再循環が検出された症例
再循環率が高値で検出されたためシャント造影を行った。
シャント造影画像より返血側に血液の流れはなく、強度な狭窄が確認されたため、 PTAを実施しております。 PTA実施後、血流は改善しその後行った再循環率測定では再循環は検出されなくなりました。

 症例 2(スライド 14)
穿刺時の手技により再循環が発生した症例
患者背景は記載された内容になります。透析開始 30分目の再循環率測定で 20%の再循環が検出されました。検出時の穿刺状況をスライドに示します。

 症例 2(スライド 15)
穿刺時の手技により再循環が発生した症例
再循環の検出によりシャント肢の確認を行ったところ、動静脈回路を逆接続していることが確認されました。このため、早期に接続を戻すことで対応しました。
その後、再循環は検出されておりません。

 症例 3(スライド 16)
シャント走行の確認不足により再循環が発生した症例
患者背景は記載された内容になります。透析開始 30分目の再循環率測定で 100NXでは 18%、 HD02では 15%の再循環が検出されました。
バスキュラーアクセスの種類は自己血管であり、スライドのような血管をしております。

 症例 3(スライド 17)
シャント走行の確認不足により再循環が発生した症例
穿刺前に確認するシャント図では別血管であったのにも関わらず、再循環が検出されたためシャント造影を行い血管の走行を確認いたしました。
シャント造影より動脈側穿刺部へ流入する血液の流れが確認されました。

 症例 3(スライド 18)
シャント走行の確認不足により再循環が発生した症例
シャント造影より動脈側へ流入する血管が確認されたため、穿刺部を変更するように提案いたしました。
穿刺部変更後、再循環率は検出されなくなりました。

 症例 4(スライド 19)
穿刺時の手技とバスキュラーアクセス機能不全により再循環が発生した症例
患者背景は記載された内容になります。透析開始 30分目の再循環率測定で 41%の再循環が検出されました。再循環発生時の穿刺状況をこのようになります。

 症例 4(スライド 20)
穿刺時の手技とバスキュラーアクセス機能不全により再循環が発生した症例
再循環検出後にシャント肢確認し、穿刺距離が 4cmと近いことが確認されました。
このため、穿刺距離を十分離したところに再穿刺し再循環は検出されなくなりました。

 症例 4(スライド 21)
穿刺時の手技とバスキュラーアクセス機能不全により再循環が発生した症例
こちらの症例は穿刺距離が 4cmと近い間隔で穿刺しておりましたが、これまでも同様な箇所で穿刺しており、再循環を検出していなかった症例でした。しかし、このときの測定では 41%と高値を示したため、シャント造影を実施し血管の走行を確認いたしました。
これによりシャント内に狭窄が確認されたため、 PTAを実施しております。
PTA実施後、再循環は検出されなくなりました。

まとめ

再循環は透析効率を低下させる因子の一つであるため、検出した場合は早期に対応する必要があります。
再循環率測定の実施によりバスキュラーアクセス機能不全の発見が可能であるため、再循環率測定はバスキュラーアクセスの管理に有用であると考えられます。
現在の穿刺部や新たに穿刺部を変更した場合、再循環測定を実施することは安全に透析を行うためには重要であると考えられます。

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