バスキュラーアクセス(以下、VA)管理は日本透析医学会や日本臨床工学技士会からガイドラインが発行され、近年の透析患者の高齢化と糖尿病性腎症を患った患者の増加により、VA管理の重要性が増しています。
これまでVA管理はVAへの穿刺を日常的に行う臨床工学技士や看護師が理学所見(視診・聴診・触診)や、静脈圧や脱血不良の有無などを考慮し、スタッフの経験則に頼り、管理してきました。しかし、昨今ではVA 管理に超音波診断装置(以下、エコー)をはじめとする様々なモニタリング機器やIT 関連機器の普及により、シャント情報のデータを数値化することができ、具体的なVA管理が可能となりました。これらを活用したVA管理業務は医療機器の専門職である臨床工学技士にとって重要な業務となりつつあります。
HOSPYグループにおいても医師をはじめとするチーム医療でVA管理を行っております。今回はエコーを用いた臨床工学技士のVA管理を紹介します。
VA管理として理学所見や穿刺困難症例、血流不良などの情報はじめとし、ニプロ社製透析モニタHD02(以下、HD02)とエコーのモニタリング機器を活用し、VA管理システムにて情報を集約しVA管理を行っております。
図1.臨床工学技士による測定エコーは医師の指示のもと臨床工学技士が測定(図1) し、機能評価および形態評価を行います。まず、機能評価ではパルスモードにてFV:Flow Volume(シャント血流量)およびRI:Resistance Index(血管抵抗指数)を測定(図2)します。
図2. V:Flow Volume(シャント血流量)およびRI:Resistance Index(血管抵抗指数)測定
FVは測定誤差が少ないとされる上腕動脈にて測定します。FVが350~400ml/min以下であると、シャント閉塞や脱血不良が発生する危険性が高まるとされ、またFVが1500~2000ml/min以上になると過剰血流となり、血行動態や心機能に影響を与え、スティール症候群を引き起こす可能性があるとされるため注意が必要です。RIは0.6~0.7以上で、高度狭窄や閉塞を疑います。次に形態評価ですが、Bモードとカラードプラモード(図3)にてシャント全体を動脈吻合部から短軸像で血管の走行や狭窄部を確認し、長軸像にて吻合部および穿刺部、狭窄部を重点的に確認し、血管径や血管の深さなどを測定(図4)します。狭窄部の血管径の測定では狭窄部前後の正常部の血管径の測定(図5)が重要です。
図3. Bモードとカラードプラモード
図4. 血管径や血管深度の測定
図5. 狭窄部前後の血管径の測定
また、硬めのエコージェルを多めに塗布し、プローブと体表間を少し浮かすような状態で、静脈が潰れないよう走査することが重要です。
エコーでのVA評価はVAに問題がある時だけでなく、インターベンション治療前後(以下、VAIVT)で行うことで比較が可能となるのでさらに有用なVA管理ができます。さらに穿刺困難症例には、エコーガイド下穿刺が有効です。エコーを用いて、穿刺部位の血管の状態を画像で確認しながら、穿刺を行うことで穿刺の成功率を高めます。透析治療において、穿刺は必要不可欠ですが、患者にとって大きなストレスとなっており、穿刺に伴う苦痛を最小限に抑えることが重要です。
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